ハロー、ガイズ。
これは『呪術廻戦』の宿儺と悠仁を理解しよう、という記事。ネタバレ注意。
先に私の結論を。私は考える、宿儺の要は「快・不快」で、悠仁の要は【死】、宿儺は8話の時点で悠仁に記憶をいじられている、と。このマンガを読んでいる人は、宿儺と言えば【殺す】で、逆に悠仁は「生かす」と感じる人が少なくないはずだ。なぜ私の結論がこうなるか話してみる。
記憶をいじられた?宿儺
宿儺は理由のない殺しをしない…と書くとこの画像と矛盾する。しかし、宿儺はこの回で特級呪霊退治に利用されたことに対して、「つくづく忌ま忌ましい小僧だ」と言い、特級呪霊に「おい ガキ共を殺しに行くぞ 付いて来い」と言っている。理由ならある。このコマ以外の宿儺は、殺しに理由を持たせている。宿儺は理由なしに殺すか殺さないか、宿儺の言動を挙げていく。
禁を破れば殺す (115話)
(指一本分以上の指図をし、自分から頭を下げなかった美々子を殺害)たかだか指の一二本で俺に指図できると思ったか?不愉快だ。 (112話)
(スマホを取り出し宿儺に術式を向け、「死ね‼」と言った菜々子を殺害) (112話)
(特級呪霊に攻撃されて)良い良い…ここで死ね (8話
宿儺は理由のある殺しをする。宿儺の殺しは、「禁を破れば」「指一本分に余る指図に等しい殺人依頼をして自分から頭を下げないなら」「スマホを取り出し攻撃体勢を取り『死ね‼』と言えば」「特級呪霊が攻撃してきたら」「自分を殺せる五条悟が攻撃してきたら」だ。もちろん宿儺は悪いヤツだが、宿儺の行動原理は極めて呪術的で、理由のない殺しは呪術的でない、という話。宿儺の魂に二度触れた真人すら、殺されていない。宿儺は漏瑚をすぐ殺せるが、漏瑚が胸倉を掴んでも、頭が高くても、隕石を投げて来ても、殺していない。1話の「鏖殺(皆殺し)だ」はニュートラルで、理由のあるなしはわからない。
宿儺の言動をろ過していくと、快・不快と、以外にも秩序が残る。
つまらん←よく言う
面白い←繰り返し言う
頑張れ、頑張れ (8話, 115話)
指の礼を忘れるとはな (11話)
これは‶縛り〟誓約だ 守らねば罰を受けるのは俺 (11話)
身に余る私益をむさぼれば報いを受ける (11話)
共に腹の底から小僧を嗤った仲だ (28話)
一度は許す 二度はない (28話)
分を弁えろ (28話)
指一本分くらいは聞いてやる (112話)
俺には俺の計画がある (112話)
指の礼だ (112話)
つまらん&面白い。頑張る、礼、縛り、誓約、罰、私益、報い、利害、仲、分、計画。宿儺は悪者だが、やたらと折り目正しい秩序型の悪者だ。宿儺は不愉快を毎回ちゃんと口にするし、生得領域がわからない悠仁に要約して話すし、伏黒が気にしてる結論「虎杖なら戻らんぞ」と言うし、話をする前に「少し話そう」と宣言するし、「虎杖を人質にする」と言うし、話が終われば殺す前に殺すと宣言し、戦いの最中に伏黒を「良い術式だ」「宝の持ち腐れだな」と褒めてアドバイスする。だから折り目正しい宿儺と「特に理由はない」が妙にズレる。
腹の底から出た
その逆に無秩序型の人物がいる。主人公、虎杖悠仁だ。【ブッ殺してやる】。これは話で悠仁が真人に向けたセリフ。なぜ彼は真人をブッ殺そうとしているのだろうか?順平を殺された怒りかもしれない。正しくない真人に「正しい死」を与えるためかもしれない。しかし、
二度も繰り返された本音
今まで俺の口から出た言葉は全て嘘だったんじゃないかと思えるくらい腹の底から出た本音 (27話, 28話)
ここには、むかつく、ふざけんな、ちくしょう、よくもなど怒りの言葉がない。正しい、人を助ける、「必ず報いを受けさせてやる(26話)」も抜け落ちている。彼の脳裏に、順平、爺ちゃん、オカ研の二人、ナナミン、伏黒恵、釘崎野薔薇、五条先生のどの顔も浮かばない。お前、ツギハギ野郎!という相手もいない。俺が、自分が、という主語もない。怒りなく、正しさなく、大事な人なく、相手なく、自分すらない【ブッ殺してやる】はかなり異常だ。悠仁、いったいお前は誰で、誰を殺すつもりなんだ?悪いパパ、伏黒甚爾すら自分や息子を捨てきれなかった。だが悠仁の本音【ブッ殺してやる】には誰もいない。“今まで俺の口から出た言葉は全て嘘だった”も不穏だ。爺ちゃんが祖父ちゃんでないから、悠仁と爺ちゃんに血縁がないかも、という説があるが、血以前に彼の本音、腹の底に爺ちゃんがいないのがヤバい。
もちろん、 ふだんの悠仁はイイヤツで面白いヤツだ。悠仁は爺ちゃん見舞いのためにオカ研にいたし、子供を助けたし、同級生が激太りでも激ヤセしても同じ子として見るし、九相図(人間と呪霊のハーフ)の痛みも感じるし、伏黒をかばう。悠仁は、映画の話が深くわかるし、タッパとケツのデカい女が好みだ。順平に仲間としての記憶を植え付けるし(不確定)、東堂に親友としての記憶を植え付けるし、張相に兄弟としての記憶を植え付ける。……が、これらは悠仁以外から見て悠仁が大切になるものばかりだ。悠仁が自分から大切に思う誰かは語られない。悠仁は野薔薇や真希や冥冥、レディに対して恋していない。
また、悠仁は【死】をやたらと語る。
爺ちゃん死にました (1話)
死(1話)
そうだな学校からは死の予感がする (1話)
死ぬのは怖い (1話)
爺ちゃんも死ぬのは怖かったかな (1話)
今目の前にある「死」と爺ちゃんの「死」何か違う? (1話)
爺ちゃんは正しく死ねたと思うよ (1話)
こっちは間違った「死」だ (1話)
知ってた?人ってマジで死ぬんだよ (1話)
自分が知ってる人くらいは正しく死んでほしい (1話)
(どっち道オマエは死ぬ気じゃねーか) (1話)
なんで俺が死刑なんだって思ってる (2話)
自分の死に様はもう決まってんだわ (2話)
俺 即 死刑!? (3話)
この遺体持って帰る (6話)
死にたくない‼ここで死んで‼死んだとして‼それは「正しい死」か⁉ (7話)
俺は強いと思ってた死に時を選べる位には強いと思ってたんだ (7話)
あ゛ーー‼死にたくねぇ‼嫌だ‼嫌だぁ!!! (7話)
でも死ぬんだ… (7話)
「正しい死」か?じゃねぇよ 甘えんな (7話)
こちとらオマエに殺されてんだぞ (11話)
死んでまでテメーと一緒なのは納得いかねぇけど (11話)
結局テメェも死にたくねぇんだろ (11話)
そもそもテメーのせいで死んでんだよ (11話)
死が多すぎ。一般論として死が怖いとは何か違う。死にそうな目に遭ったからとも何か違う。悠仁自身が【死】にこだわってる。丁寧に考えてみると、悠仁は【死】以外何もない。宿儺は「頑張る」「恩」「礼」「序列」「仲」「利害」「計画」「禁」などの基準があるが、悠仁は【死】ばかりを語り、助けるや正しさへのこだわりが薄い。例外的に一度だけ悠仁の中から出てきた別の言葉がある。それはこれ。
伏黒も 釘崎も 五条先生…は心配いらねぇか 長生きしろよ(9話)